大阪府立環境農林水産総合研究所

本田管理 その1

本田管理 その1

水稲の施肥ー肥料の基本
肥料の種類


肥料の種類無機肥料(化学肥料)
従来から広く使われる肥料。肥効成分は無機物主体のため肥効は早い。(塩化燐安、燐加安等)化学肥料は自然界に存在するリン鉱石やカリ鉱石などから作られています。
単肥とはチッソ、リン酸、カリの3成分のうちどれか1成分を主体としたものをいいます。
2成分以上を含む複合肥料のことを化成肥料と呼びます。
化成肥料は肥料成分のうち多いもの2成分の合計量によって15%以上30%未満の普通化成肥料と30%以上の高度化成肥料とに分けられます。

化学肥料である硫安等硫酸根を含む肥料は硫酸根が土壌中に残留します。これらは土壌を酸性化する原因ともなるので,硫安は酸性肥料とされます。水田では硫酸根が還元されて硫化水素ガスになりやすいので,鉄分の少ない老朽化水田ではイネに害を及ぼす可能性があります。硫化水素の発生による被害は,水田の還元化が進む夏以降のイネの出穂から登熟期に多くなり、いわゆる「秋落ち」になります。これらの理由から硫安系肥料は水稲用としては嫌われる傾向があります。
しかし硫酸中の硫黄は、イネがタンパク質を合成するために欠かせない元素ですし、よほどの老朽化水田で無ければ余り神経質に硫黄成分を嫌う必要はありません。
尿素は土壌を酸性にする副成分を含まないので土壌を酸性化させない生理的中性肥料です。また硫化水素を発生しないので,酸性土壌や老朽化水田に適しています。

有機肥料
有機物を原料とした肥料のことをいう。エコ栽培への関心の高まりから最近はいろいろな配合のものが各メーカーから販売されている。有機物はそのままでは植物の根が吸収しにくいので、時間をかけて微生物等によって分解され、無機化されてから植物に吸収されるため即効性は低いが、そのかわり長期間に渡って効果があることが多い。

緩効性肥料
与えたときから肥料効果があらわれ、ある程度の期間効果が持続する肥料のことをいいます。一度に溶けないため環境に対してもやさしい肥料と言えます。秋落ち傾向のある水田では特に効果的です。緩効性肥料は大きく二つのタイプに分類されます。

1)表面を被覆した肥料
水溶性の化成肥料を一度に溶け出さないように表面を樹脂などで覆った肥料で、「被覆複合肥料」と呼ばれます。樹脂の厚さによって溶出期間をコントロールすることができ、肥料成分はバランスよく溶け出します。

2)緩効性の成分を使用した肥料
無機質のク溶性や不溶性原料、さらには水溶性原料をミックスした肥料などで、使用原料によって持続期間は異なります。どの成分も同じように効くのではなく、特定の成分だけが緩効性になっている肥料もあります。

基肥一発型肥料
近年、緩効性肥料を組み合わせて肥効をコントロールし、基肥時期の施用だけで穂肥時期にも適切な肥効を発現させ、施肥労力の省力化に役立つ「基肥一発型肥料」の利用が増えています。
基本的に温度変化によって肥効をコントロールしているのでその年の気温の推移によっては狙ったとおりの効果が得られないこともありますが、省力化に適しています。
なお、一発肥料はその地域によって適切な配合が異なりますので自分の地域に適した推奨品を使うようにしましょう。