農林分野 安全で豊かな食と農を支える調査研究

育苗期 その2

育苗期 その2

浸種~播種
<浸種・催芽>

種子消毒が完了したら籾に十分吸水させ、揃って一斉に発芽させるために水に浸種する。浸種はきれいな水道水の停滞水で行い、河川や池では行わないこと。「ハト胸催芽器」等の商品名でヒーターで温度を保ち、ポンプで水を循環し酸素を供給できる市販の装置もあるが、特に低温環境で育苗するのでなければ大きめのポリバケツ容器でも行える。浸種すると籾から糖分等が水に溶け出し、水が腐敗しやすくなり水中酸素も欠乏するので1~2日に一度ゆっくりと水を交換する。

水温と浸種日数

浸種日数は積算温度(温度×日数)80~100℃を目安にする。
低温なら吸水が劣るので時間は長くなり、高温なら短くなる。

大阪で5月中旬以降の気温なら、浸種していればそのままで芽もおおむね揃って出てくるが、水温が低い場合は最終日に32℃程度に水温を上げて一気に催芽することもできる。温度を上げると芽の伸びが早いので伸ばしすぎないように注意する。また当然ながら40℃以上の水温に当たると籾が死んでしまうので温度管理には細心の注意が必要。

<床土の調製と苗箱準備>
山土等自家採取土

自家採取土は病原菌の残留やpHの関係でおすすめできないが、どうしても使う場合は、事前に3~5mmの網目のふるいにかけておく。その後、握っても固まらない程度までよく乾燥しておく。水稲育苗培土のpHは4.5~5.5の弱酸性が望ましいが、採取した土はいろいろな性質を持っている。土壌のpH矯正はイオウ華(酸性にする)、炭酸カルシウム(アルカリ性にする)等の薬品で一応可能であるが、大幅な矯正は不適であるので、特にpH7以上のアルカリ性土壌しか無い場合は、市販培土等代替土壌を求めることが望ましい。
肥料は播種前10日以内に均一に床土と混合する。
施肥量は土壌の種類により若干異なるが下記の施肥基準を目安とする。

山土等自家採取土

市販粒状培土

市販の育苗用土は暖地用粒状培土を用いましょう。pH等はすでに調整されているので安心。20kg1袋で育苗箱6~10枚を作ることが出来ます。
肥料は混入されているのでそのまま使えるが、苗立枯病予防の床土消毒用防除薬剤は混入されていないので適宜混入施用すること。

育苗マット

土以外の材料を利用した育苗マットも木材パルプ系、ロックウール系、もみがら系等いろいろなものが開発されており、土を詰めた苗箱よりかなり軽量で女性やお年寄りにも扱いやすいのが大きなメリットになる。ただし一度乾かしてしまうとその後の吸水が悪かったり、保水力、株張り、苗の生育、植付時の苗の切断、浅植になる等の問題点があるものもある。浅植になってしまう場合は田植機の植付深さを標準より1段階深植にセットするとよい。

床土消毒

フザリウム菌を始めとした苗立枯病の予防のためタチガレエース粉剤等殺菌剤を1箱当り3~6gの計算で床土とよく混合しておく。
ビニールシート上でスコップで混合するか、セメントミキサー等を利用する。この段階で混入せずに播種作業時の播種直前の潅水時に殺菌剤の液剤を混入した水を用いて消毒する方法もある。大規模育苗施設等ではこの方が省力的である。個人でも大きめのジョウロを用意すれば出来る。

苗立枯病原菌の種類と効果のある薬剤

※ダコニールとタチガレンの近接処理は薬害のおそれがあるので不可。

育苗箱・資材消毒

一度使用したことのある育苗箱、シートやビニール等は資材消毒剤のイチバン500~1000倍液またはケミクロンGのlOOO倍液に10分浸潰して消毒する。ケミクロンGは酸化作用で鉄の器具を錆びさせやすいので注意する。
箱を十分乾燥したら新聞紙や市販の根切シート等を敷き、床土を詰める。土いれ用のならし板を用いて均一に高低が無いようにならしておく。水抜き穴が小さく根切りシート不要の育苗箱もある。大量に育苗する場合は作業性が良い。

<は種>
床土のかん水と消毒

播種直前に細目のジョウロ等で1箱当り1~1.5リットル程度、十分しみわたるまでたっぷり潅水する。前述のように液剤で床土消毒するときはこの時の水に混入する。潅水は必ず播種する直前に行い、播種覆土後自然に水が覆土上面まで浸みあがってくるようにする。播種してから芽が出るまでにジョウロ等で水をやると覆土が流されて籾が露出したりするので出芽完了まで上から水はかけないこと。

は種量

播種量は多い方が田植時の欠株が少なくなるのでどうしても厚く播きがちであるが、軟弱苗になり易いので、稚苗の場合で播種量を乾籾150g/箱(催芽籾では180g程度)ぐらいを限度とし、乾籾120g(催芽籾では150g程度)程度に押さえたできるだけ薄播きで仕上げることが望ましい。
中苗の場合は更に少なくすることが必要で、乾籾で80~100g程度(催芽籾で100~130g)にとどめる。

播種

出芽苗立ちがよく揃うように、均一播種を心がける。催芽籾の状態は白い芽がかすかに見える程度(ハト胸状態)がよい。芽が1mm以上伸びてくると播種時にポキッと折れてしまう可能性がある。一度折れた芽は二度と再生しないので、結局その籾は死んでしまう。
籾は播きやすいように事前に新聞紙に拡げ軽く風乾しておくか、網袋ごと遠心脱水機にかけて水を切っておく。水分が多いと手や器具にべたべたくっついて非常に作業がしにくい。
複数の品種を使う場合は、混種のないよう十分注意し、各品種ごとに育苗箱の色を変えたり、品種名を書いたラベルをつけるなどして管理する。

覆土

播種後、種籾が十分隠れる程度に均一に覆土する。覆土の量は1箱当たり0.8~1.0リットル程度で、薄すぎると種子が露出して、苗立ちが揃わなくなるので注意する。
種子が見えなくなる程度に十分覆土する。
積み重ね育苗の場合は覆土後、新聞紙等を箱と箱の間に挟んで積み重ね、むれによる出芽不良を防止する。

出芽

は種後、30~32℃の暗室内に2~3日程度置く。夜間低温に注意して適温に保つ。覆土のもち上げ、種籾浮上り防止、乾燥防止のため積重ねの箱数は10~20枚くらいが適当であり、箱はよく水を切ってから積む。育苗箱を積み重ねた最上部には、は種しないで土だけを入れて潅水した箱を重しとして置く。
市販の育苗器に収納する場合は水盤に必ず水を張り、保温に注意し、カバーのすき間のないようにする。
育苗器が無い場合はビニールハウス内か日当りのよい暖かな場所で、下にむしろ等を敷き、育苗箱を積重ね、ぬれたコモやむしろとビニールや保温シートで光を遮断しすき間のないように包み込み出芽まで保温する。コモ巻きの中に温度計を差し入れておいて温度を監視する。
直射日光等で日中温度が高温になりすぎる場合は乾いたむしろ、黒寒冷紗等で遮光し、温度を調節する。
1cm程度白い芽が出そろったら出芽は完了である。

  • なお出芽完了までは播種時に潅水した水で十分なのでさらなる潅水の必要はない。
  • なお、大阪府奨励品種のうち「キヌヒカリ」と「きぬむすめ」は品種の性質として発芽後の伸びが早い方なので出芽加温時間は30℃48時間を限度とし、徒長させないよう十分注意する。
  • 出芽の遅延や生育の不揃い、特に低温下での「むれ苗」、高温下での「軟弱徒長苗」などの苗質の低下を防止する。

 

 

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