大阪府立環境農林水産総合研究所

調査結果報告 2004年度

淀川調査結果報告2004

環境研究部 水生生物グループ

 淀川大堰の完成から21年が経過し、淀川ではダムのような状態が常態化し、水位水量の変化が少なくなるなど攪乱が減少し、さらに淀川の河川環境は大きく変化しました。また、2000年頃から、淀川の一部の水域ではボタンウキクサ、ナガエツルノゲイトウ、オオカナダモなどの外来水生植物が繁茂し始め、当該水域の水質や底質の悪化を引き起こすなど水生生物の生息環境に悪影響を及ぼしていました。そのため、当所ではこのような河川環境の変化が魚類相にどのような影響を与えているかについて調査を行いました。

 

 

 

生息確認魚種と分布2004
  全域(本流+ワンド)   本流  ワンド
魚種 尾数 比率(%)   尾数 比率(%) 尾数 比率(%)
ブルーギル 4684 21.76   971 12.64 3713 27.17
フナ類* 2833 13.16   74 0.96 2579 18.87
オオクチバス 2778 12.91   1195 15.56 1583 11.58
モツゴ 2371 11.02   235 3.06 2136 15.63
オイカワ 2121 9.85   1887 24.57 234 1.71
コウライモロコ 1747 8.12   1271 16.55 476 3.48
ニゴイ類* 1465 6.81   594 7.74 871 6.37
カマツカ 1008 4.68   886 11.54 122 0.89
ゼゼラ 680 3.16   201 2.62 479 3.50
バラタナゴ 533 2.48   7 0.09 526 3.85
ハス 325 1.51   64 0.83 261 1.91
タビラ 245 1.14   14 0.18 231 1.69
カネヒラ 242 1.12   167 2.17 75 0.55
ヨシノボリ類* 201 0.93   7 0.09 194 1.42
タモロコ類* 80 0.37   18 0.23 62 0.45
カダヤシ 63 0.29   21 0.27 41 0.53
ヒガイ類* 57 0.26   41 0.53 16 0.12
タウナギ 30 0.14   . . 30 0.22
コイ 28 0.13   9 0.12 19 0.14
イタセンパラ 6 0.03   1 0.01 5 0.04
ボラ 5 0.02   5 0.07 . .
ワタカ 5 0.02   1 0.01 4 0.03
カワムツ 4 0.02   1 0.01 3 0.02
カムルチ 3 0.01   . . 3 0.02
ヌマチチブ 2 0.01   2 0.03 . .
ワカサギ 2 0.01   . . 2 0.01
アユ 1 0.00   1 0.01 . .
ギギ 1 0.00   1 0.01 . .
キンギョ 1 0.00   1 0.01 . .
テラピア 1 0.00   . . 1 0.01
ドンコ 1 0.00   . . 1 0.01
ムギツク 1 0.00   1 0.01 . .
メダカ 1 0.00   1 0.01 . .
ウナギ 1(目視確認) .   1(目視確認) 0.01 . .
ハクレン 1(目視確認) .       1(目視確認) 0.01
合計 21525 .   7679 . 13668  
  全域(本流+ワンド)   本流 ワンド

赤文字の魚種は外来種(国内移入種,亜種を含む)。
*フナ類には、ゲンゴロウブナギンブナを含みます。

*タモロコ類には、ホンモロコタモロコを含みます。

*ニゴイ類はニゴイ、コウライニゴイを含みます。

*ヒガイ類はカワヒガイビワヒガイを含みます。

*ヨシノボリ類はシマヒレヨシノボリカワヨシノボリ含みます。

キンギョは種数には入れていません。

 

 調査概要

【方法】 

 2004年7月1日から9月6日の期間に本流域95地点,ワンド域50地点において,(図1)
長さ30m,袖網長1m,網目5㎜,採集面積 約140㎡の地曳網を用いて魚類採集を実施しました。(写真)

 

図1 調査地点地図地曳網魚類採集.

図1                          地曳網写真

【結果】

  今回の調査により,淀川全域から34種21,524個体が採集されました(フナ類、ニゴイ類、ヒガイ類、ヨシノボリ類などはそれぞれ1種としました。詳細な採集データはこちら)。1970年代の調査開始以来(ワンドは1971年,本流は1972年より)新たに確認された種はワカサギテラピアで,前回の調査(1993年)まで確認されたが,今回確認されなかった種スジシマドジョウツチフキイチモンジタナゴウキゴリナマズした。
 生息地別に見ると,本流域では28種7,676個体が採集され,優占種オイカワ24%,コウライモロコ16%,オオクチバス15%,ブルーギル13%カマツカ12%でした。1地点当りの出現種数と採集個体数の平均値は,それぞれ6.3種と80.8個体であり、(図2) ,出現種数を過去の調査結果と比べると,在来種数では変化は認められず,外来種数が増加傾向を示しました。(図3)
 

図2 淀川における水域別採集魚種数及び採集個体数図3 淀川本流域における採集魚種数の経年変化

図2                              図3

 

 個体数の増加および生息域の拡大の著しいオオクチバスブルーギル(図4-1,4-2) は,本流域での採集比率が増加しており(図5) ,本来止水域を生息域とするこの2種が本流域へ生息域を拡大していることが確認されました。

図4-1 オオクチバスの採集個体数と出現率の経年変化図4-2 ブルーギルの採集個体数と出現率の経年変化

図4-1                                 図4-2

図5 ブルーギル・オオクチバス採集個体数の水域別比率の経年変化図6 淀川ワンド域における採集魚種数の経年変化

図5                              図6

 

 ワンド域では27種13,848個体が採集され,優占種はブルーギル28%,フナ類21%,モツゴ15%オオクチバス11%,ニゴイ6%でした。1地点当りの出現種数と採集個体数の平均値は,それぞれ8.0種と277.0個体となり,いずれも本流域より高い値を示しました(図2)。
 しかし,平均出現種数を過去の調査結果と比較すると,外来種数の増加と,在来種数の減少が認められました(図6)。減少傾向の顕著な在来種は
ハスワタカツチフキなどワンド域を主な生息場所とする種で、イタセンパラも減少が懸念されました。