環境分野 快適な環境や生物多様性の保安全を支える調査研究

カワチブナ摂餌刺激物質の養殖餌料への添加効果

カワチブナ摂餌刺激物質の養殖餌料への添加効果

生物多様性センター

1 目的 

 府内の河内、和泉地方のため池で養殖されている大阪府特産のカワチブナは釣り対象魚「ヘラブナ」としてよく知られ全国各地に出荷されています。しかし、それらの養魚ため池は給餌や生活排水の流入などによる窒素、リン等の負荷によって富栄養化が進み、植物プランクトンの異常発生、いわゆるアオコの発生が見られるようになってきています。これらの現象は景観上の問題だけでなく、悪臭を放つなど公害を引き起こし、ため池の生態系にも影響を与えています。こうしたアオコの発生原因となる栄養塩類の負荷を軽減するため、カワチブナの味覚を刺激し、摂餌を促進させる物質をアミノ酸数種類の中から探し出し、その添加効果を調べたところ、窒素負荷軽減に効果が認められたので報告します。

2 方法

 供試魚は水生生物センタ-内で養成したカワチブナ0~1年魚を使用しました。実験は円型500l水槽(実験水量300l)6面に第1表に示す条件で供試魚を収容し給餌(魚体重の1~5%/日)を行い、植物プランクトン繁殖水を注入しながら3カ月間飼育しました。また、無給餌区を設け対照としました。餌料は府内の養殖業者が使用している自家配合餌料を用い、ペレットまたはクランブル状に加工したものを使用しました。摂餌刺激物質としてアラニン、グリシン、バリンのアミノ酸3種を用い、それぞれ0.1Mの濃度に調整後混合し、外割3%添加しました。この間の増重量と排糞量を調べるとともに、摂食量と排糞量及び窒素の回収量の関係などについて検討しました。

 さらに、大型養魚池においてアミノ酸添加餌料、アミノ酸無添加餌料(加工の状態は水槽実験と同じ)を魚体重の3%給餌することによって、211日間養成し、アミノ酸の添加効果を調べました。

3 成果の概要

(1)水槽での実験 

ア.飼育成績

 1年魚では、対照区は増重が見られず、給餌区は33.8 ~158.6gの増重を示した。アミノ酸添加区は無添加区に比べ、餌料効率で3~5%高い値を示しました。

 0年魚では、給餌区は6.9~45.0gの増重を示し、アミノ酸添加区は無添加区に比べ、餌料効率で2.1~20.0%高い値を示しました。

イ.摂食量と排糞量及び窒素回収量の関係

 1日の総摂食量と総排糞量の関係から求めた重量消化率は1年魚、0年魚ともアミノ酸添加区で高い値を示し、窒素に換算した消化率においても重量消化率と同様の傾向を示しました。

 また、総回収窒素(増肉及び糞の採取による水中からの窒素回収量)に占める増肉に由来するものの割合はアミノ酸添加区が無添加区に比べ、1年魚で1~9%、0年魚で2~5%高い値を示し、アミノ酸の添加は増肉による窒素回収に効果があると考えられました。

(2)大型養魚池における実験

 アミノ酸無添加区は試験開始時の重量144.4kg、平均体重4.0gであったものが、取揚げ時の重量553.7kg、平均体重21.0gとなり、増重倍率は5.3、餌料効率は57.2%を示しました。一方、アミノ酸添加区は試験開始時の重量208.6kg、平均体重4.0gであったものが、取揚げ時の重量874.0kg、平均体重32.3gとなり、増重倍率は8.1、餌料効率は63.6%を示しました。この結果、アミノ酸添加区は無添加区に比べ、増重倍率で1.5倍、餌料効率で6.4%高い値を示し、アミノ酸添加効果が認められました。さらに、給餌による窒素負荷に対する増肉による窒素回収の割合はアミノ酸無添加区で31.3%、アミノ酸添加区で34.8%と、アミノ酸添加区で3.5%高い値を示したことから、餌料へのアミノ酸添加は窒素回収に効果があると考えられました。

4 普及に向けて

 現在、大阪府のカワチブナの生産量は約600トンで給餌量は約1200トンと推定されます。先述の大型池での結果から試算すると、この場合増肉による窒素回収率は27.4%となる。それに比べ、アミノ酸を添加すると、窒素回収率は30.9%に上昇することから、給餌量は1065トンですみ、餌料が135トン節約できる計算となります。

 アオコの発生を抑制したり、除去する試みは各地で実施されています。しかしながら、これらの方法は薬剤を散布したり、機器を用いたりするため、予算や労力面で負担が大きくなります。

 それに比べ今回の方法は使用している餌料にわずかな摂餌刺激物質を添加するだけで労力も予算も節約され、給餌による窒素等の負荷を抑制することができます。現在カワチブナ養殖で使用されている自家配合餌料は粉状である。今回の試験ではアミノ酸を混ぜた餌料を粒状に加工して使用したがカワチブナの摂餌状況は良好でした。しかし、試験レベルではなく養殖に必要な大量の自家配合餌料を粒状に加工するには餌料製造機が必要で、今後の課題となるでしょう。一方、アミノ酸の水中での拡散効果が認められており、餌料に直接アミノ酸を混ぜ込む方法も可能と考えられました。

 また、最近の不況を反映して手軽なレジャ-が脚光を浴び、釣り堀などが見直されてきています。摂餌刺激物質を添加した餌でヘラブナが初心者にも釣れるといった状況になる可能性もあります。

 このように、今回開発したカワチブナの摂餌刺激物質の餌料への添加技術は、ため池の自家汚染防止とともに、身近なリクリエ-ションにも役立つ技術と考えられます。

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