大阪府立環境農林水産総合研究所

 

大阪府水産試験場研究報告 第16号

大阪府水産試験場研究報告   第16号

全文(PDF 5.82MB)  目次(PDF 708KB)

 

  1. イカナゴ仔稚魚における耳石輪紋形成の日周性の確認
  2. 大阪湾に放流したホシガレイmtDNAの多型について
  3. 大阪湾におけるコノシロKonosirus punctatusの産卵特性
  4. 岸和田沖の人工砂浜に出現した十脚甲殻類
  5. 漁獲シミュレーションによる大阪湾におけるイカナゴ漁の最適解禁日推定
  6. 放流ヒラメの耳石にみられた異常透明帯

イカナゴ仔稚魚における耳石輪紋形成の日周性の確認

大美博昭・日下部敬之・斉藤真美
Validation of the daily deposition of otolith increments
in the Japanese sand lance larvae and juveniles
Hiroaki Omi,Takayuki Kusakabe and Mami Saito

大阪水試研報(16):1~5,2006
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(16):1~5,2006

本文(PDF 720KB)

 イカナゴ仔稚魚における耳石輪紋形成の日周性を明らかにするために,飼育を行い耳石を観察した.大阪湾で漁獲された稚魚をALC溶液に8日の間隔をおいて2回浸漬し,扁平石においてALCマーク間の輪紋数と飼育日数を比較したところ,観察した全ての個体で両者は一致し,輪紋形成の日周性が確認された.また,人工授精により得た卵から飼育を行い,仔魚の扁平石においてふ化後日数とふ化輪と考えられる輪紋から外縁までの輪紋数の比較をしたところ,輪紋の計数が可能であった個体は少なかったが,両者はほぼ一致した.

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大阪湾に放流したホシガレイmtDNAの多型について

辻村浩隆
Mitochondrial DNA variability of the spotted halibut Verasper variegatus
released in Osaka Bay
Hirotaka Tsujimura

大阪水試研報(16):7~10,2006
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(16):7~10,2006

本文(PDF 235KB)

 大阪湾に放流された2系統(岩手県および長崎県)のホシガレイのmtDNAの多型を調べた.D-Loop前半約400塩基の配列を調べた結果,岩手県の種苗から一つ,長崎県の種苗から一つの塩基配列の型が見られ,生産年の異なる2年分の種苗間の違いは見られなかった.また,両系統の塩基配列の間では2塩基のみが異なっていた.これらのことから放流個体の多様性が非常に低いことが明らかとなった.一般に放流種苗は多様性を備えている事が望ましいと考えられており,新たな方法を導入し多様性を持つ種苗の生産が必要と考えられた.

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大阪湾におけるコノシロKonosirus punctatusの産卵特性

山本圭吾
Spawning characteristics of the Konoshiro gizzard shad in Osaka Bay
Keigo Yamamoto

大阪水試研報(16):11~20,2006
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(16):11~20,2006

本文(PDF 733KB)

 1995年から2004年の調査で得られた丸特ネットの試料から,大阪湾におけるコノシロ卵出現の季節変化および分布を示し,その出現と水温,塩分等の環境要因との関係からコノシロの産卵特性について考察した.その結果,大阪湾におけるコノシロ卵の出現は4月~8月(盛期は5-7月)であった.また,分布は概ね湾中北部が中心で,季節により分布が変化する傾向はみられなかった.環境との関係ではクロロフィルaとの対応は見られなかったが,水温については出現時期と,塩分については分布との対応が見られ,水温約12度を越えた頃から,塩分の低い海域で産卵を開始する可能性が示唆された.

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岸和田沖の人工砂浜に出現した十脚甲殻類

有山啓之・日下部敬之・大美博昭・辻村浩隆
Decapod crustaceans occurred on an artificial sandy beach off Kishiwada
Hiroyuki Ariyama,Takayuki Kusakabe,Hiroaki Omi and Hirotaka Tsujimura

大阪水試研報(16):21~39,2006
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(16):21~39,2006

本文(PDF 2.4MB)

 大阪府岸和田沖に造成された人工砂浜で,33ヵ月にわたり3種の漁具を用いて十脚甲殻類を採集した.この砂浜にはガザミ等の有用種を含む50種が出現し,造成直後から継続して多くの個体の生息が確認された.主要種を利用形態別に分けると,周年定住種:ユビナガスジエビ,ヤマトモエビ,イッカククモガニ,スネナガイソガニ,イソモエビ,チチュウカイミドリガニ,スジエビモドキ,季節定住種:ヨシエビ,アシナガスジエビ,クマエビであった.富栄養化した大阪湾中部でも砂浜を造成すれば,多様な生物の生息場になることがわかった.

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漁獲シミュレーションによる大阪湾におけるイカナゴ漁の最適解禁日推定

日下部敬之・保正竜哉
Estimation of the optimum opening of the sand lance fishery in Osaka Bay
using a simulation model
Takayuki Kusakabe and Tatsuya Hosho

大阪水試研報(16):41~46,2006
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(16):41~46,2006

本文(PDF 506KB)

 シミュレーションモデルを用いて、大阪湾におけるイカナゴ漁の経済的な最適解禁日を推定した.まず2003年の実際の漁獲を再現し,次にその過程で得られたパラメータを用いて,解禁日を全長25~40mmの範囲で変化させ,漁期中の漁獲尾数,重量,金額の変化を調べた.その結果,これまで経験的に行われてきた解禁日設定方針が,少なくとも初期資源量の少ない年については妥当であることが示唆された.

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放流ヒラメの耳石にみられた異常透明帯

佐野雅基
Abnomal formation of translucent zone found in the otoliths of
the captured artificial-reared Japanese flounder Paralichthys olivaceus
Masaki Sano

大阪水試研報(16):47~52,2006
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(16):47~52,2006

本文(PDF 612KB)

 大阪府で放流したヒラメの耳石の中心不透明部に異常な透明帯が多くみられたため,2001年4月~2003年3月に入手した標本魚でその出現状況を調べたところ,低水温の3・4月に放流を行った2001年放流魚に,明瞭な異常透明帯が59.8パーセントの高率で確認された.飼育試験でも,3・4月に開始した飼育例で異常透明帯が高率で出現し,その異常は透明帯形成期に低水温により生じた不透明な障害輪による見かけ上の異常であることが示された.また,耳石障害輪の形成と同時に成長停滞も起きていたことから,低水温期の放流は望ましくないことが示唆された.

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