大阪府立環境農林水産総合研究所

 

大阪府水産試験場研究報告 第15号

大阪府水産試験場研究報告   第15号

全文(PDF 7.49MB)  目次(PDF 313KB)

 

  1. 2002年春期に大阪湾東部海域で発生した麻痺性貝毒について
  2. 漁獲努力量でチューニングしたコホート解析による瀬戸内海東部3海域のイカナゴAmmodytes personatus当歳魚の資源尾数推定
  3. 石桁網で漁獲されたマコガレイ小型魚の再放流後の生残について
  4. .大阪湾に生息するシャコ類について

シンポジウム
大阪湾におけるマコガレイの生態と資源変動

2002年春期に大阪湾東部海域で発生した麻痺性貝毒について

山本圭吾
  Occurence of Paralytic Shellfish Toxins in the Spring
Bay of 2002 in east side of Osaka Bay
Keigo Yamamoto

大阪水試研報(15):1~8,2004
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(15):1~8,2004

本文(PDF 1.21MB)

 2002年春期に大阪湾東部海域で初となる麻痺性貝毒による二枚貝の毒化が確認されたため, 毒化原因プランクトンの出現状況,貝の毒化,毒の減衰状況等を調査した.その結果,原因プランクトンはAlexandrium tamarenseであり,最高37cells/mlの細胞密度にまで増殖していた.また,貝毒の蓄積はアサリ,アカガイ, トリガイで確認され,最高値はアサリにおける18.0MU/gであった.貝毒の減衰状況を飼育と天然海域で比較した ところ,飼育条件下では天然海域に比べ毒の減衰が遅く,長期間貝毒の蓄積が見られた.

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漁獲努力量でチューニングしたコホート解析による瀬戸内海東部3海域の
イカナゴAmmodytes personatus当歳魚の資源尾数推定

日下部敬之・保正竜哉・玉木哲也
  Estimation of Resource of 0-age Sand lance Ammodytes personatus
in eastern Seto Inland Sea by tunin VPA using fishing effort data
Takayuki Kusakabe , Tatsuya Hosho and Tetsuya Tamaki

 大阪水試研報(15):9~16,2004
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat(15):9~16,2004

本文(PDF 1.05MB)

 努力量データでチューニングしたコホート解析法を新たに開発し,瀬戸内海東部 (紀伊水道,大阪湾,播磨灘)におけるイカナゴの初期資源尾数および終漁時残存尾数を推定した. 1990~1995年の6年間について推定を行った結果,初期資源尾数は1,205億~2,532億尾(平均約1,660億尾) の範囲で変動しており,漁期中に約60%が漁獲され,30%が自然死亡し,10%あまりが生き残ると計算された. 初期資源尾数と漁獲尾数との相関は高かったが,それらと漁獲重量との相関は低かった.

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石桁網で漁獲されたマコガレイ小型魚の再放流後の生残について

有山啓之・日下部敬之・大美博昭・辻村浩隆
  Survival after release of small marbled sole Pleuronectes yokohamae
caught by Ishigeta dredge
Hirouiki Ariyama, Takayuki Kusakabe, Hiroaki Omi and Takahiro Tsujimura

 大阪水試研報(15):16~21,2004
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat(15):16~21,2004

本文(PDF 610KB)

 マコガレイ小型魚再放流の効果を明らかにするために,2001年5~11月と2002年3月に 石桁網試験操業を実施し,3日後の生残率を調べた.生残率は3月には86.1%と高かったが,5~11月は 0~27.3%で,8~10月はほぼ全滅状態であった.死亡個体は無眼側の内出血が顕著で,甲殻類や貝殻と の擦れが死亡原因と推定された.生残率は高水温や魚体が小型の場合に有意に低いことが示唆された. 春季から秋季における小型魚の再放流は効果が小さく,他の施策の検討が必要と考えられた.

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大阪湾に生息するシャコ類について

有山啓之
Stomatopoda in Osaka Bay
Hirouiki Ariyama

大阪水試研報(15):23~27,2004
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(15):23~27,2004

本文(PDF 531KB)

 1981~2003年に実施した延べ57回の底曳網試験操業で漁獲されたシャコ類の種組成を まとめた.出現したのは,スジオシャコ,ナンキシャコ,トゲシャコ,クロビシトゲシャコ,セスジシャコ, シャコ,オキナワシャコの7種であった.量的には大部分がシャコであるが,北部ではスジオシャコが混在し, 中部以南ではそれ以外の種も加わって多様性が増していた.他海域と比較すると,大阪湾のシャコ類は瀬戸 内海と紀伊水道の中間的な組成を示すと考えられた.国内では記録の少ないオキナワシャコの形態や色彩 についても記載した.

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シンポジウム
大阪湾におけるマコガレイの生態と資源変動

本文(PDF 4.03MB)

1.日  時:平成15年12月10日(水)10:00~17:30
2.場  所:大阪府立水産試験場研修室 
3.参集範囲:大阪府環境農林水産部水産課、大阪府漁業振興基金事務局、同栽培事業場、大阪府立食とみどりの総合技術センター水生生物センター、兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センター、大阪府立水産試験場 
4.挨  拶:大阪府立水産試験場長 
5.開催趣旨:企画調整室  マコガレイは小型底びき網やカレイ建網などで多く漁獲され、大阪湾における重要な漁業資源のひとつである。そのため、昭和60年代中頃から漁業者による本種の資源管理が実施されたほか、稚魚の放流など、資源の維持、培養を図るための施策が積極的に行われてきた。この間、これらの施策の裏付けとなる種々の調査、研究も継続的に実施され、本種に関する知見は他の魚種を圧倒するほど多数蓄積されているといっても過言ではない。近年本種の漁獲量の低迷が続き、その原因解明や資源回復に関する対策が緊急かつ重要な課題となっている今、これらの知見をもう一度見直し、今後の調査の方向性を再確認することは非常に重要なことであると思量される。そこで、本種の過去の調査結果をもとに、発生段階別に現在まで分かっていること、分からないこと、注目点、問題点などを整理し、既往の調査、研究を有機的に結びつけるとともに、新たな研究の方向性を見いだすことを目的に本検討会を開催するものである。 
6.話題提供
1.大阪湾における環境の経年変動と特異年 ~夏季における水温、溶存酸素などを中心として~
(大阪水試 第1研究室 中嶋昌紀)
2.大阪湾におけるマコガレイの生態および資源
2-1産卵場の分布と浮遊仔魚の補給実態
(同 第2研究室 日下部敬之)
2-2当歳魚、1歳魚の現存量および小型魚再放流の評価
(同 第2研究室 有山啓之)
2-3マコガレイの漁獲実態と資源解析
(同 第2研究室 大美博昭)
2-4マコガレイのmtDNAを用いた系群識別
(同 第3研究室 辻村浩隆)
3.マコガレイ栽培漁業の現状と問題点
(同 第3研究室 睦谷一馬)
4.兵庫県におけるマコガレイ調査の実態
(兵庫水技セ 五利江重昭)
5.資源管理型漁業の実態と今後の課題
(大阪府水産課 久保佳洋)

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