大阪府立環境農林水産総合研究所

 

大阪府水産試験場研究報告 第11号

大阪府水産試験場研究報告   第11号

全文(PDF 6.11MB)  目次(PDF 672KB)

 

  1. 1994~1996年夏季の大阪湾におけるGymnodinium mikimotoi 赤潮の発生状況について
  2. 大阪湾におけるサツキマス(降海型アマゴ)の生態について
  3. 大阪湾奥部におけるマコガレイの動態について
  4. サルエビ Trachysalambria curvirostris の1回あたり産卵数
  5. 標識放流したクルマエビ大型種苗の採補状況について
  6. 大阪湾奥部で採捕されたマコガレイとイシガレイの色素異常個体について
  7. 大阪湾で漁獲されたスズキの肉色異常について

1994~1996年夏季の大阪湾におけるGymnodinium mikimotoi 赤潮の発生状況について

山本圭吾
Occurrence of Gymnodinium mikimotoi Red Tide in Summers of
1994 to 1996 in Osaka Bay
Keigo Yamamoto

大阪水試研報(11):1~16,2000
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(11):1~16,2000

本文(PDF 1.36MB)

 1994年~1996年の大阪湾におけるG.mikimotoi 赤潮発生状況と環境要因について検討した。その結果、本種の大阪湾での最適環境は水温26-28℃、塩分30-32と推察されたが、大量の降雨 により低水温でも赤潮が発生する可能性が考えられた。大阪湾は栄養的には赤潮発生に十分な 条件にあるが、大規模な発生には降雨による陸域からの栄養塩の供給が重要であると考えられた。また、湾奥で発生した赤潮が南部に広がる要因として大阪湾に存在する恒流の流況が重要であることが判明した。

このページのトップへ

大阪湾におけるサツキマス(降海型アマゴ)の生態について

辻野耕實・大道 斉・阪上雄康・亀井 誠
内藤 馨・上原一彦
  Ecological Study on Amago Trout,Oncorhynchus masou macrostomus,
in Osaka Bay
Koji Tsujino,Hitoshi Daido,Yuko Sakagami,Makoto Kamei,
Kaoru Naito and Kazuhiko Uehara

大阪水試研報(11):17~26,2000
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(11):17~26,2000

本文(PDF 958KB)

 河川域から降海したサツキマスはイカナゴやカタクチイワシなどの魚類を主に摂餌し,非常に早い成長を示した. 降海魚の75%は雌で,海域では全て未成熟の状態であった.サツキマスは冬季にはやや沖合で生息するが,海水温が上昇する頃には 接岸傾向を示し,岸沿いを河口域(主に淀川)へ移動後,溯河する.溯河の盛期は5月中旬で,6月中旬頃には完了する.溯河行動は, 海水における温度耐性が淡水に比べて低いため,海水温の上昇による海域での生息環境の悪化により引き起こされることが推察された.

このページのトップへ

大阪湾奥部におけるマコガレイの動態について

有山啓之・佐野雅基
  Dynamics of the Marbled Sole Pleuronectes yukohamae;
in the Innermost Area of Osaka Bay
Hirouiki Ariyama and Masaki Sano

 大阪水試研報(11):27~34,2000
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(11):27~34,2000

本文(PDF 617KB)

 1993年11月~1998年7月に大阪湾奥部で石桁網によりマコガレイを計7637尾採捕した.この 海域には,5~6月まで当歳魚が大量に生息しているが,7月頃に分布量は激減し8月には全く生 息しなくなった.標準化したマコガレイ密度と大阪府の推定漁獲量を比較したところ,当歳魚では翌年の漁獲量 との間に相関はなかったが,1歳魚ではその年の漁獲量との間に正の相関がみられた.1歳魚になるまでの生残に は貧酸素化が大きく関わっていることから,マコガレイ漁獲量は前年の当歳魚の発生量と貧酸素化の程度により 大きく変動すると推察される.

このページのトップへ

サルエビ Trachysalambria curvirostris の1回あたり産卵数

日下部敬之
Number of spawning Eggs of southern Rough Shrimp
Trachysalambria curvirostris
Takayuki Kusakabe

大阪水試研報(11):35~38,2000
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(11):35~38,2000

本文(PDF 355KB)

 サルエビTrachysalambria curvirostrisの成熟個体を水槽内で産卵させ,容積法により 産卵数を計数した.産卵数は同一サイズでも個体差が大きかった.過去の知見と合わせて頭胸甲長(x:mm)と産卵数(y)の 関係式を求めたところ,y=2.93×10-2x4.78が得られた.この近似式によれば,平均的な産卵数は 頭胸甲長20mmで約48,500粒,28mmでは約242,300粒となった.別途,産卵前後の卵巣重量と比重を測定し,計算によって 産卵数を推定したところ,その近似式は産卵実験で得られた近似式とよく一致し,産卵実験で求めた近似式の妥当性が裏 付けられた.

このページのトップへ

標識放流したクルマエビ大型種苗の採捕状況について

有山啓之・藤田種美・青山英一郎
佐野雅基・阪上雄康
Capture of the Released Large-sized Kuruma Prawn with Mark
Hiroyuki Ariyama,Tanemi Fuijita,Eiichirou Aoyama,
Masaki Sano and Yuko Sakagani

  大阪水試研報(11):39~47,2000
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(11):39~47,2000

本文(PDF 734KB)

 1998年8月18~20日にリボンタグを装着したエビ1.0万尾(平均体長74.2mm)と尾肢切除した エビ4.9万尾(同70.7mm)を阪南市地先の砂浜に放流した.調査の結果,リボンタグ群は放流後 4~124日目に139尾が採捕され,尾肢切除群は6~169日目に257尾が確認された.成長は良好で, ♂で体長140~150mm,♀で160~170mmに達した.漁獲場所は,当初,関西空港~阪南市沖であっ たが,岬町沖,淡路島沖へと移動した.今回,70mmサイズ放流の有効性が確認されたが,経費等 の問題があることから,サイズをどこまで下げられるか検討する必要がある.

このページのトップへ

大阪湾奥部で採捕されたマコガレイとイシガレイの色素異常個体について

有山啓之
Anomalous Coloration in the Marbled SolePleuronectes yokohamae and
the Stone FlounderKareius bicoloratus
Caught in the Innermost Area of Osaka Bay
Hiroyuki Ariyama

大阪水試研報(11):49~52,2000
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(11):49~52,2000

本文(PDF 590KB)

 1993年11月~1998年7月に大阪湾奥部で採集されたマコガレイ7637尾,イシガレイ188尾中に, それぞれ8尾および2尾の色素異常個体(有眼側白化および両面有色)が含まれていた.これらはいずれも当歳魚で, 当歳魚中の比率はそれぞれ0.115%,1.075%であった.採集場所は,堺市前の1尾を除き,淀川河口付近の大阪湾 最奥部で,天然群の可能性が高いと考えられた.大阪湾で有眼側白化のマコガレイ成魚はほとんど見られないこと から,成魚になるまでの色素異常個体の生残率は正常個体よりかなり低いことが示唆される.

このページのトップへ

大阪湾で漁獲されたスズキの肉色異常について

大美博昭・入江正和・石渡 卓・鍋島靖信
Abnormally Colored Meat of Sea Bass in Osaka Bay
Hiroaki Omi , Masakazu Irie , Takashi Ishiwatari and Yasunobu Nabeshima

大阪水試研報(11):53~57,2000
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(11):53~57,2000

本文(PDF 942KB)

 1998年の夏に湾奥で漁獲された筋肉が黄化したスズキについて、光ファイバ分光測光装置を用いた光学的測定を行い、黄化の原因について検討を行った。光学的測定では、黄化した腹腔内脂肪や筋肉において正常個体に比べ450~500nmの波長帯で明瞭な吸収ピークが認められた。この結果と漁業者への聞き取り調査、東京湾での同様な事例との比較などから、今回の大阪湾産スズキにおける黄化の原因色素はカロチノイドであり、この年の夏に大阪湾で大発生したオヨギピンノをスズキが飽食したものと考えられた。

このページのトップへ