大阪府立環境農林水産総合研究所

[環境][報道]淀川で絶滅危惧種の淡水魚ツチフキを再発見 大阪府内でなんと約30年ぶり!

公開日 2023年06月20日

おおさか環農水研生物多様性センターと共同研究チーム(※1)は、大阪府内の淀川流域においてコイ科の淡水魚ツチフキ(※2)を約30年ぶりに発見し、その情報を論文にまとめて発表しました。

淀川で再発見したツチフキ

図1.淀川で約30年ぶりに再発見されたツチフキ

 

大阪府内においてツチフキはかつて淀川淡水域のほぼ全域と大和川水系などに分布していましたが、河川改修や外来魚の影響で1980年代から急速に確認地点数が減少しました。1994年の淀川での確認を最後に学術的な生息記録が途絶え、現在、大阪府レッドリストの絶滅危惧種に選定されています。

淀川におけるツチフキ確認地点の推移

図2.淀川でのツチフキ確認地点の推移(生物多様性センター調査・作成)

年代を追うごとに確認エリアが減少し、2000年代以降は見つかっていない。

 

今回ツチフキを発見した淀川のワンド(※3)では、生物多様性センターと「イタセンネット」(※4)が外来魚防除やモニタリング調査を実施しており、日ごろの活動がツチフキの復活につながった可能性も考えられます。

生物多様性センターは、大阪を代表する自然環境である淀川の生物多様性を保全するため、これからもイタセンネットや他機関と連携しながら、淀川の希少淡水魚類の分布調査や外来生物の防除について調査研究を推進してまいります。

本発表は、共同研究チームである滋賀県立琵琶湖博物館との同時提供です。

 

※1:おおさか環農水研生物多様性センターと滋賀県立琵琶湖博物館、大阪産業大学、大阪工業大学等との共同研究です。(なお、今回の論文の基となる、生物多様性センターが実施した守口市での調査は、淀川河川事務所からの受託調査の一環として実施したものです。)

※2:ツチフキ(Abbottina rivularis)は、大きいものでも体長10㎝程度の純淡水魚で、河川の中下流域や用水路など流れのない場所の砂泥底にすみ、底生動物等を食べる雑食性です。産卵期は4~6月で、泥底にすりばち状の巣をつくります。大阪府内ではかつて、淀川で多く見られましたが、近年は生息を確認できていませんでした。現在では大阪府レッドリスト絶滅危惧I類(もっとも絶滅が危惧されるランク)に選定されています。また、全国でも同様に減少しており、環境省レッドリストでは絶滅危惧IB類に選定されています。

※3:ワンドは、川の本流に沿ってある池状の場所をいい、本流とつながっているか、増水時につながるような水域のことです。池のように流れが無いか、あっても非常に緩やかで、多くの淡水魚の生息場所となっています。

※4:イタセンネット(淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク)は、淀川流域で活動する市民団体と研究機関、行政が連携し、国の天然記念物イタセンパラと生息地の淀川の自然再生をめざすネットワークです。

論文情報

  • 雑誌名:『Ichthy, Natural History of Fishes of Japan』(イクチー)
  • 論文題名:『大阪府淀川におけるツチフキ(コイ科カマツカ亜科)の再発見』
  • 著者:川瀬成吾(滋賀県立琵琶湖博物館)・山本義彦(大阪府立環境農林水産総合研究所生物多様性センター)・鶴田哲也(大阪産業大学デザイン工学部環境理工学科)・田中耕司(大阪工業大学知的財産学部・兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科)
  • 発行:2023年6月10日
  • 本論文のPDFファイルはこちらからダウンロードできます。

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