大阪府立環境農林水産総合研究所

図鑑

淡水魚図鑑(在来種)

ナ行

ニッポンバラタナゴ

ニッポンバラタナゴ

 本種はコイ科タナゴ亜科に属し、天然分布は琵琶湖、淀川水系以西の本州と九州北部である。 以前は府内でも淀川やため池に広く分布していたが、中国大陸から移入されたタ イリクバラタナゴの分布が日本全国に広まったことで、本種との交雑がすすみ現在は絶滅の危機にある。 現在の府内の生息地は八尾市内の一部のため池のみである。ニッポンバラタナゴと タイリクバラタナゴとの見分け方はタイリクバラタナゴが大型化することや、タイリクバラタナゴでは腹ビレ の前縁が白くなること、ニッポンバラタナゴでは側線鱗がほとんどないことなどであるが、雄雌、成長段階、個体差などで 完全に分けることは困難である。
満1年で成熟し、5-6月にドブガイなど淡水産の二枚貝の出水管(※1)に産卵する。 1回の産卵で数個の電球型の卵(※2)を産みつけるが、イタセンパラなどに比べて少ない。 貝のエラでふ化した仔魚(※3)は、2週間程度貝の中で保護されてから泳ぎ出す。前期仔魚にある翼状の卵黄 突起はバラタナゴ属特有のものである。1年で4cmほどになり、産卵期には雄は鮮やかな婚姻色を呈する。 その体色が“バラ”タナゴの名前のゆえんで、属名Rhodeusも“バラ色のもの”を意味する。山陽地方には同じバラタナゴ属のスイゲンゼニタナゴ が生息し、九州北部にはスイゲンゼニタナゴと亜種関係にあるカゼトゲタナゴが分布する。
ニッポンバラタナゴは現在、環境省レッドリスト2020「絶滅危惧ⅠA類」、大阪府レッドリスト2014「絶滅危惧Ⅰ類」。

 ((希少魚の調査研究))

出水管

(※1)出水管

卵

(※2)

仔魚

(※3)仔魚