大阪府立環境農林水産総合研究所

図鑑

大阪湾の生き物図鑑

大阪湾の生き物

シャコ

シャコは茹であがりがシャクナゲの花のような淡い赤紫色であることから、江戸時代にシャクナゲと呼ばれていた名が縮まったそうです。シャコは甲殻網口脚目シャコ科というグループに属し、頭にカナヅチ形の目と鎌のような大きな捕脚をもち、胸に歩脚が三対、腹の遊泳脚に綿のような鰓があり、尾節には鋭いトゲがあります。英名はその姿形からMantis shrimp(カマキリエビ)と付けられています。北海道以南、仙台湾、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海などの水深10~20メートルの浅い海に住み、比較的汚濁に強く、きれいな砂地より泥がかった場所に多くいます。尾節をスコップのように使い、自分の体長の2~4倍のU字型の巣穴を掘り、単独で生活しています。夜間や潮が濁った時に巣穴から頭を出し、眼をグルグル回して獲物を探し、巣穴に近づくゴカイ類・貝類・エビ・小魚などを捕らえます。獲物を捕るカマ(捕脚)には鋭いトゲが並び、とらえた獲物を逃がしません。昆虫のカマキリはカマをふり下ろすように使いますが、シャコは下からすくい取るように一瞬でエサを捕らえます。シャコは獲ったエサを巣穴に持ち帰って食べ、食べかすは穴の外に捨てます。巣穴は隠れたり、餌を食べる重要な場所で、ガラス水槽で飼育すると、餌も十分に食べず、ストレスで衰弱死してしまうそうです。
 
 
 オスは第3歩脚の基部に長い生殖脚が付いているので、これで雌雄がわかります。交尾はオスが第1 胸脚の先の毛でメスを愛撫し、静かになったメスを仰向けにして、その上に乗りX字型に交差して交尾します。産卵期は4~5月と8月の2回の盛期があり、メスは巣穴の中で2~<10万粒の卵を産卵します。産んだ卵は最初は紐状に連なっていますが、これを胸脚で直径10cm程の円盤に整形します。メスは卵塊を絶えず動かして新鮮な海水を当て、孵化までの約1ケ月を餌も取らずに卵の世話をします(底びき網に入ったシャコが持っている黄色いボロ雑巾のようなものが卵です。)。卵は巣穴の中でふ化しますが、孵化幼生は巣穴からすぐに外に出ず、2回の脱皮をした後に巣立ちます。アリマ幼生という1センチ以上になるおもしろい格好をした浮遊幼生期を経て、17ミリほどで海底に降りて稚シャコに変態し、海底での生活を始めます。春産れのシャコは翌年春(満1歳)に 10センチになり、第一回目の産卵を行い、満2歳で体長13センチになり、二年目の産卵を行い、満3歳で16cmになり、その年に一生を終えます。エビやカニより成長が遅く、値のよい12センチ以上には2>年以上かかります。シャコは主に底びき網で漁獲しますが、シャコをねらう時は何隻かがコンビを組み、順番を変えながら同じ場所を曳いていきます。前の船が海底を掘り起こすと、シャコは穴の底から這い出してくるので、後ろの漁船にたくさん入るためです。
 
 シャコの旬は何と言っても春でしょう。春は産卵をひかえたメスが卵を持ち、オスも肉が充実しています。晩秋以降、雌雄ともに肉が充実してうまくなります。子持ちを食べたい人は、売られているシャコの尾節の腹側をみれば、黄色い卵が透けているので、目安になります。シャコは強力な肉食者で消化酵素が強いため、買ったシャコを長く放置しておくと、自分の肉が消化されて肉の弾力が落ちてくるので、活きの良いうちに茹でるのがベストです。食べ方は、塩ゆでしたものを殻をむいて食べるのが基本ですが、わさび醤油やマヨネーズをつけたり、酢味噌あえ、にぎりずしの種、天ぷらにもします。かつて、シャコは大阪湾の安くて美味しい物の代表でしたが、大阪府のシャコの漁獲量は昭和46年~平成11年までは平均464トン(222~856トン)あったのが、平成12~16年には平均で185トン(126~233トンと、近年非常に減っています。伊勢湾や東京湾でも同様の減少傾向が見られ、こうした資源の落ち込みが何によるものか、興味のあるところです。

 (イラストは大阪府提供)

図2 シャコの生活史

図2 シャコの生活史