大阪府立環境農林水産総合研究所

[環境][お知らせ]「大阪城のサクラを守れ!」中学生と大阪城公園のクビアカツヤカミキリ調査を実施しました!

公開日 2022年05月16日

2022年4月28日(木曜日)に、初芝立命館中学校・高等学校の中学2年生の皆さんと連携して、大阪府の代表的なサクラの名所である大阪城公園において、クビアカツヤカミキリ※の一斉調査を実施しました。

調査の結果、幸いなことに、クビアカツヤカミキリは確認されませんでした!

調査にご尽力いただいた中学生の皆さん、ありがとうございました!!

 

大阪城公園ではこれまでもクビアカツヤカミキリは確認されていませんが、もし入り込んでいた場合、被害を最小限に防ぐための早期発見、早期対策が重要となります。

そこで、今回中学生のみなさんの力を借り、大阪城公園のサクラを守るため、クビアカツヤカミキリを早期発見し、対策につなげることを目的としました。

 

調査には、初芝立命館中学校2年生123名、教員8名にご参加いただきました。

 

クビアカツヤカミキリは、今の時期、幼虫の姿でサクラやモモなど、バラ科の樹木の中に潜んでいます。

幼虫がいる樹木の幹や根には、幼虫が樹木に穴をあけたときに排出されるフラス(木くずと糞の混合物)が確認されます。

フラスを出す昆虫はクビアカツヤカミキリだけではありませんが、クビアカツヤカミキリのフラスは薄く削られた形をしており、大量のフラスが樹液と混ざって穴から押し出されると、うどん状に固まることが特徴です。

ただ、今の時期は幼虫が小さくフラスも少ないので、今回調査初体験の生徒の皆さんにクビアカツヤカミキリのフラスが見極められるか不安もありました。

そこで今回は、中学校で生徒の皆さんに配布されているタブレット端末を活用して調査を行いました。

 

00_各種フラス

参考写真:フラスの見分け方

(大阪城公園で撮影したものではありません)

01_クビアカツヤカミキリフラス

参考写真:クビアカツヤカミキリのうどん状になったフラス

(大阪城公園で撮影したものではありません)

 

今回の調査は、

1.生徒の皆さんが調査対象エリア内のサクラとモモの木に出ているフラスを探す

2.怪しいフラスがあればタブレット端末で写真を撮影

3.撮影した写真を生物多様性センター職員のパソコンへメール送信

4.生物多様性センター職員がリアルタイムでフラスがクビアカツヤカミキリのものかを識別

という流れで実施しました。

02_調査地図

調査対象エリアは、図の赤丸で囲まれている場所としました。

数名ずつ、班に分かれて調査していただきました。

 

最初に、当センターの職員から、今回の調査の目的と、クビアカツヤカミキリの生態や、フラスの特徴についてご説明しました。

生徒の皆さんは事前学習でもクビアカツヤカミキリとそのフラスについて学んできてくれており、おさらいもかねてのご説明となりました。

03_事前説明

その後、班に分かれて、調査対象エリア内のサクラを調べます。

怪しいフラスがあれば、写真を撮影して送信。

04_調査の様子1

05_調査の様子2

大阪城を背景に、真剣な様子。

調べた木の本数も記録します。

06_調査の様子3

この間、生物多様性センターの職員が送られてくる写真をチェックします。

07_メールチェック

 

約1時間の調査を終え、再度集合。

当センター職員から、調査結果を発表します。

フラス疑いの写真は、36枚送られてきました。

ドキドキしながら確認を行いましたが、それらは

アリが出したいわゆる「アリ道」と呼ばれるものや、

08_蟻道

コスカシバという蛾の幼虫が出したもので、

09_コスカシバのフラス

クビアカツヤカミキリのフラスは1つもありませんでした!

調査本数は、サクラ842本、モモ125本。

大阪城公園のサクラは約3,000本。

約1時間で、その3分の1近い本数を確認することができたことになります。

これは、当センターの職員総出でも到底確認することができない本数です。

私たちとしても、専門家と市民とが協力し、たくさんの目で調査を行う市民科学の力を再認識できた調査となりました。

 

今回の調査ではクビアカツヤカミキリのフラスは確認できず一安心だったものの、今回調査対象外であったエリアもあり、また、今回調査対象としたエリアにおいても、今後もクビアカツヤカミキリが入ってこないとは限りません。

そのため、当センターでは継続して市民科学の力を借りた調査を実施したいと考えています。

 

また、実施にあたっては大阪城公園の管理事業を行っている大阪城パークマネジメント株式会社、「おおさか大阪生物多様性リンク」で当センターと連携している大和ハウス工業株式会社及び大和リース株式会社にご協力いただきました。

ありがとうございました!

 

※クビアカツヤカミキリ

10_クビアカツヤカミキリ

サクラやモモなどバラ科樹木の害虫。2011年に日本への侵入が確認され、2018年1月に特定外来生物に指定。サクラやモモの木に産卵し、ふ化した幼虫は木の内部を食い荒らすことで、木が衰弱し、やがて枯れてしまう。

被害の拡大が続けば、お花見ができなくなったり、モモが食べられなくなったりしてしまう可能性がある。

大阪府内では2015年の初確認以降、南部から分布域が急速に拡大しており、大阪城公園への侵入が危惧される。
 

添付資料

 

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