大阪府立環境農林水産総合研究所

[環境][お知らせ]生物多様性センター第6回談話会「新たな手法でここまで分かった! おおさかの生物多様性」を開催しました!

公開日 2022年03月04日

 2022年2月23日(水曜日・祝日)に生物多様性センター第6回談話会「新たな手法でここまで分かった!おおさかの生物多様性」を開催しました。

 新型コロナウイルス感染症対策のため、Zoomウェビナーを使用したオンライン開催とし、全国から約90名の方にご参加いただきました。ありがとうございました!

 

 話題提供では、まず株式会社バイオーム 藤木 庄五郎代表取締役より、「撮って集めて楽しんで、アプリで調べる生物多様性」と題してお話しいただきました。

 

 世界的な生物多様性の損失を背景に、生物多様性をデータ化、数値化することの重要性について述べられた後、そのための市民科学的アプローチとして、スマホを使用して楽しく参加できる、いきものコレクションアプリ「Biome(バイオーム)」を活用した事例についてご紹介いただきました。

 約42万人のユーザーから集められた位置情報付きの写真データを、外来生物の防除、生物の出現・分布変化予測等に活用するほか、環農水研や各地の学校、行政、大学等と連携した取り組み等についてもご紹介いただきました。

 アプリの使用者からの「生物を探す目を持つことで景色の見え方が変わり、世界の解像度が変わった」、「価値観の変容に結び付いた」という声もご紹介され、アプリの普及が人の意識・行動変容にも結び付いていることが示されました。

 今後は、生物多様性の4つの危機にアプローチしたアプリ開発やツール提供に取り組んでいかれるとのことでした。

撮って集めて楽しんで、アプリで調べる生物多様性

 

 

 次に、生物多様性センター 山本 義彦主任研究員より、「捕って潜って水汲んで、ここまで分かった大阪の淡水魚」と題して話題提供いたしました。

 

 これまで生物多様性センターで実施してきた様々な魚類調査方法の紹介とともに、過去数年の調査で府内22河川から92種の魚類を確認したことを報告しました。

 しかし、従来の方法は、規制等の都合で一般の人には実施が難しかったり、熟練度が調査結果に影響すること、労力や時間が多く必要だといった課題がある中で、新たな手法である環境DNA調査について紹介しました。

 環境DNA調査では、1Lの水を汲み、その中に含まれている生物のDNAを検出することで、直接捕まえることなく魚の在/不在を明らかにすることができ、実際に府内河川においても、数日の調査で数年かけて調査したのと同じ魚種検出されたことを報告しました。

 ただし、個体サイズや、何を食べているかといった生態系への影響は実際に捕まえてみると分からないことから、今後は、目的に応じて様々な手法を使用しながら、順応的管理のためのモニタリング調査に取り組んでいくと述べました。

捕って潜って水汲んで、ここまで分かった大阪の淡水魚

 

 

 最後に、生物多様性センター 幸田 良介主任研究員より、「拾って数えて分析して、ここまで分かった大阪のシカ」と題して話題提供いたしました。

 

 大阪にシカがどれくらいいるのかを調べるために開発した「糞塊除去法」によって推定した生息密度と、農業被害や森林植生への影響との関連性から、シカを10頭/m2程度に抑えれば被害が軽減されることを明らかにし、大阪府の管理計画に活用されていることを報告しました。

 また、実際にどれだけ農作物を食べているのかを、窒素安定同位体比を用いて検討した例を示し、農作物を食べるとシカの栄養状態が良くなり、森林植生を食べる量が減るという状況をご紹介しました。

 最後に、元々シカがあまり生息していない大阪南部において最近シカの確認事例が増えており、遺伝的解析により、沖ノ島からの外来シカの分布拡大と、それに伴う在来シカとの交雑が生じている可能性があることをご紹介しました。

 今後は、既存の手法を活かしつつ、新たな手法も導入し、状況の把握と対策に活かしていきたいと述べました。

拾って数えて分析して、ここまで分かった大阪のシカ

 

 

 話題提供後のディスカッションでは、参加者の皆さまから多数のご質問をいただき、活発な議論が交わされました。

 とくに、今後も専門家だけではなく、市民が参加する調査は重要性を増すこと、市民の行動変容のためには、生物多様性を認識し、価値観を持つことの重要性が再確認されました。

ディスカッション

 

 

 また、参加者アンケートでは、概ね「大変満足した」「満足した」と高評価をいただき、その理由として「バイオームの可能性と大阪府の生物多様性の現状と課題について理解を深めることができた」「様々な調査手法や、生物多様性の現状、研究者の方の生物多様性への考え方を知ることができた」といった意見が挙げられました。

 アンケートでいただいた今後の希望テーマや課題点も参考にしながら、継続して生物多様性の情報発信に取り組んでまりいます。
 

講師資料

当日の発表資料について、未発表資料等を除く当日資料の一部をご覧いただけます。無断での転用は禁止します。

 

また、生物多様性センターの研究成果につきまして、関連する成果はこちらから閲覧可能です。

 

関連リンク

 

添付資料

​​​​

 

■お問い合わせはこちら

生物多様性センター (環境研究部 自然環境グループ)

担当:幸田・近藤・丸山

[TEL]072-833-2770

[FAX]072-831-0229