環境分野 快適な環境や生物多様性の保安全を支える調査研究

カワチブナの不稔化技術の開発

カワチブナの不稔化技術の開発  

生物多様性センター

研究の背景及び目的

 カワチブナは大阪府下のため池のみならず、海外でも養殖されている重要な養殖対象魚種である。他のフナ類と容易に交雑し、カワチブナの形態的特徴だけでなく、生産性の低下などの問題を生じています。また、釣り用として放流された全国の湖沼河川においても交雑化が見られ、フナを取り巻く生態系そのものが危惧されるようになってきています。

このため、当センタ-では選抜育種によるカワチブナの優良品種の開発とともに、バイテクによる不稔性魚の作出などの試験を行なってきました。

しかし、選抜育種の面では作出魚の遺伝的、生化学的な特性が十分に把握されていず、バイテク面では安定的な不稔性魚等の大量作出技術の確立が遅れているため、実用化を目指す目的で本試験を行いました。

結果

1. 3倍体の大量安定作出技術の開発

1)0℃40分間の低温処理が有効でした。

2)卵径が概ね1.5mm以上の卵を産出する3~4年の若年魚を採卵に使用した場合に3倍体作出率が90%以上に向上しました。

 2. 4倍体の作出処理条件の検討

1)受精卵に温度処理、圧力処理、高pH処理、サイトカラシンB処理等を施したが、4倍体は作出されませんでした。

2)ポリエチレングリコ-ルによる精子融合→卵を受精し3倍体が作出され、融合精子による受精が確認されたことから、精子融合による4倍体作出の可能性が示唆されました。

3)プロタミンによる精子の接着効果→卵の受精までには至っていません。

3. 3倍体の特性評価

1)成長摂餌能力2倍体と同程度かそれより劣る成長しか示しませんでした。

そのことから、摂餌能力も3倍体は2倍体より劣ると思われました。

 

2)遺伝的変異

再生産関連形質生残率の遺伝率はA系統で0.575と高くなったが、H、Y系統では低く、遺伝的変異は小さくなりました。

成長関連形質遺伝率はA、H系統で低く選択効果は期待できず、Y系統では高い値を示し、選択効果が期待できます。

形態関連物質遺伝率はA系統で頭部形態、Y系統が形態全体的に高い値となり選択効果が期待でき、H系統では低い値を示し選択効果は期待できません。

遺伝的変異が大きく、選択効果が期待できるのは、A系統の生残率、Y系統の成長関連形質及びA、Y系統の形態関連形質でした。

 

3)環境適応性

3倍体では成長とともに体長、体重のバラツキが大きくなり、生残率が低下しました。酸素消費量は、3倍体は2倍体と差がないか、2倍体より低い値を示し、低酸素条件に対する適応性が高いことが認められました。

 

4)生殖特性

3倍体2年魚の生殖腺の発達状況は2倍体2年魚に比べ悪く、成熟卵や精子の流出は認められませんでした。

3倍体2年魚の精巣をすりつぶし2倍体の成熟卵との受精を試みたが卵発生は全く観察されず、配偶子の形成がなされなかったことが窺えました。

  3倍体生殖腺の組織標本を作成し観察したが、卵巣卵のなかには卵黄物質を蓄積して発達するものも見られるがごく一部で、熟卵を持たないと結論でき、精巣においても細胞の分化は未熟な段階にあり、精子形成に至らないと思われました。

それらのことから、3倍体魚の不妊性が確認されました。

 

5)生物学的特性

尿細管の観察では、3倍体の細胞核及び細胞は2倍体より大きく、管を構成する細胞数は少なく、高倍数化に伴う細胞容積の増大-細胞数の減数現象を実証する結果を示しました。

脳の形態、尿細管の頸部、近位部、遠位部の直径は2倍体-3倍体間で大差は見ら れなかったが、細胞数及びその容積は2倍体-3倍体間で異なっていました。

  尿細管の糸状体の数は3倍体で著しい減少が見られ、その直径は2倍体、3倍体ともほぼ類似した値を示しました。

成果の活用と今後の展開

1. 3倍体、4倍体の作出技術

融合精子による卵の受精など新手法による3、4倍体の作出

→希少魚の保存に応用できます。

 2. 3倍体の特性

・優良品種の開発、固定と質的向上に寄与

・生殖腺の発達はありません。

→通常魚の生殖腺発達時期、産卵期にも成長が見込めます。

産卵による魚体の損耗や疾病発生が予防できます。

・交雑が防止できます。→放流による自然生態系への影響がありません。

・酸素消費量が少ないです。

→飼育管理、輸送に有利です。

 3. 4倍体の作出技術

4倍体と2倍体の交雑

→3倍体の大量生産が容易となります。

実用化が可能となります。

 

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