環境分野 快適な環境や生物多様性の保安全を支える調査研究

イタセンパラの野生復帰計画 

イタセンパラの野生復帰計画

放流場所付近で発見されたイタセンパラ稚魚放流場所付近で群泳するイタセンパラ稚魚

(左)放流場所付近で発見されたイタセンパラ稚魚  

(右)放流場所付近で群泳するイタセンパラ稚魚

 

 淀川は生物多様性がきわめて高いことが知られており、そこに生息するコイ科タナゴ亜科のイタセンパラは、そのシンボルフィシュとされています。また、本種は天然記念物(文化財保護法)や国内希少野生動植物種(種の保存法)にも指定される希少種です。淀川ではかつて城北ワンド群を中心に広く分布していましたが、河川改修や河川の撹乱(かくらん)の減少、外来種の増加などにより個体数や生息域がいちじるしく減少しました。平成18年以降は淀川において生息が確認されず、自然状態で個体群が回復する可能性がきわめて低い状態となっています。その一方、生物多様性センターでは天然記念物指定以前の昭和46年から、淀川産のイタセンパラを累代飼育し系統保存を行ってきました。

 そこで、生物多様性センターは国土交通省 近畿地方整備局 淀川河川事務所とともに、文化庁や環境省などの関係機関の協力を得ながら、淀川の生物多様性保全の取り組みの一環として、イタセンパラを淀川に野生復帰させるプロジェクトを進めてきました。検討の結果、淀川の一部に本種が生息できる環境が整ってきたため、試験的に生物多様性センターで飼育しているイタセンパラを放流(再導入)することになりました。

 昨年(平成21年)秋に、雌雄それぞれ250個体、合計500個体を淀川へ放流したところ、今年(平成22年)の4~6月に放流場所付近で稚魚133個体の生息が確認されました。確認されたイタセンパラ稚魚の数は少なく、イタセンパラが定着するには十分なものとはいえませんでしたが、イタセンパラの野生復帰の第一歩となったものと考えています。稚魚の数が少なかった原因については、冠水状況や気象条件などの物理環境、また産卵床の二枚貝類や他魚種(外来魚を含む)の生息状況などの生物環境が複合的に関係していることが考えられ、今後はこのような問題点を解決しながら、安定した野生復帰にむけて努力していきます。さらに、今後淀川でのイタセンパラを保全するためは、研究機関や行政のみならず、地域住民の皆様にもご協力をお願いしたいと考えています。

 なお、密漁がイタセンパラの減少要因のひとつとなっているため、密漁防止の観点から生息場所や調査方法等については、非公開とさせていただきます。

 

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