環境分野 快適な環境や生物多様性の保安全を支える調査研究

淀川魚病調査

淀川における魚病発生原因調査

生物多様性センター

1.発病からの経過

 平成11年12月下旬に、守口市庭窪地区に衰弱した体長約25㎝以上の大型ギンブナ、ゲンゴロウブナが漂着しました。衰弱魚は、口唇部、各鰭基部の出血、鰓の極度の貧血症状を示しており、また、淀川本流のオイカワなどの小魚に眼球や各鰭、尾柄部に出血症状を示す魚が出現しました。
 同時期、上流の宇治川で衰弱し眼球、各鰭、尾柄部などの出血症状を示すオイカワが発見され、その原因は腹口類の寄生によるものと新聞報道が行われました。翌年以降、宇治川では、オイカワなどの小魚に眼球、各鰭、尾柄部などの出血症状を示す魚は見られず、宇治川での魚病の発生は沈静化しましたが、淀川の鳥飼地区では毎年冬になると衰弱した大型フナ属の出現や小魚への腹口類の寄生が継続し、平成12年度からはフナ属の魚にウオビルの寄生も新たに出現して問題となっています。

2.発生している病気の種類

(1)冷水病
 冷水病原菌は、滑走細菌の仲間の長桿菌で、その名前はFlavobacterium psychrophilumと言います。北米のサケ科魚類(ニジマスなど)で発生していた細菌性の病気で、低水温期に発病することから冷水病と名付けられました。その後、ヨーロッパへ伝播し、1984~85年の冬以来、サケ科魚類で大きな被害を出していますが、日本では1987年に四国のアユ養殖場、1990年に東北地方のギンザケ養殖場で確認され、全国に伝播しています。特にアユ養殖で大きな被害を出し、問題となっています。最近では、発病した琵琶湖産アユなどの放流により、各地の河川のアユで発病が確認され、病原菌は河川に定着しているようです。この細菌は培養が困難なため、DNA(PCR)、蛍光抗体法などで診断を行っています。
 発病時の症状は、稚アユでは体表の退色・白濁、脂鰭から尾柄部のびらんや潰瘍。養殖アユでは鰓や内臓の貧血、鰓蓋下部の出血などです。
 フナ属での症状は退色の白化、各鰭基部及び口唇部の出血、内臓諸器官の貧血、特に鰓の貧血です。
 淀川でフナ属に発生している冷水病はアユ、マス類などの冷水病原菌と遺伝的や血清タイプが異なることが明らかになっています。

 

写真1-1 口唇部、各鰭基部、鰓の貧血写真1-2. 内臓諸器官の退色

写真1 冷水病に感染、発病したギンブナフナ(口唇部、各鰭基部の出血、鰓の貧血、内臓諸器官の退色)

 

写真2 TYE寒天培地に繁殖した冷水病原因菌のコロニー

写真2 TYE寒天培地に繁殖した冷水病原因菌のコロニー

 

写真4 尾鰭の鰭条内に寄生する腹口類

写真4 尾鰭の鰭条内に寄生する腹口類

 

写真3 Nested PCR検査結果の陽性例

写真3 Nested PCR検査結果の陽性例
(光沢のある黄色コロニー)
(左右のラインはマーカー、右端は陽性サンプル)

 

 (2)腹口類
 外国から渡来したと推定される二世代吸虫です。淀川の小魚の鰭、体表などに寄生(メタセルカリア)します。寄生された小魚は、ビワコオオナマズ(終宿主)に食べられ、ビワコオオナマズの腸管内で成熟、ミラシジウムを含む虫卵を放出します。ミラシジウムはカワヒバリガイ(第一中間宿主)へ侵入し、成長してセルカリアとなります。セルカリアはカワヒバリガイから泳ぎだし、小魚(第二中間宿主)に寄生し、メタセルカリアとなるとされています。

写真5 鰭条内から取り出した腹口類

写真5 鰭条内から取り出した腹口類

 

(3)マミズヒダビル
 外国から渡来したと考えられるヒルの仲間で、侵入経路など詳細については不明。

写真6 鰓蓋裏に付着するマミズヒダビル

写真6 鰓蓋裏に付着するマミズヒダビル

 

写真7 取り出したマミズヒダビル

写真7 取り出したマミズヒダビル

 

3.病気の現状

(1)冷水病
 a. 淀川で冷水病に感染し発病している魚は、今のところ、フナ属の大型魚のみで、その他の魚での発病は見られていませんが、オイカワ、ハス、コウライモロコ、モツゴ、コイなど多くの魚種が保菌魚となっています。しかし、近年オイカワに潰瘍状患部をもつ個体が見られるようになっています。
 b. フナ属が冷水病となり斃死するのは12月~3月と水温の低い時期のみです。フナ属を含め淀川水系で冷水病の保菌魚が見られるのは淀川、宇治川、木津川で、桂川については不明です。しかし、平成15年には、3,4月に採集したオイカワ、フナ属に冷水病症状発病魚が見られ、例年とはことなる状況でした。また、分離菌株もタイプが異なるようです。
 c. 大阪府内の淀川水系で、アユの放流されている水無瀬川、芥川のオイカワなどから保菌魚は見られていません。芥川への放流アユは高率で保菌魚が確認されています。
 d. 平成12年度の大型フナ属の守口市庭窪地区への漂着数は1月中旬(11~20日間)には57尾と最大となりましたが、13年度は2月上旬(1日~10日間)に21尾と平成12年度の約1/3に減少しました。14年度はフナ属の死亡魚はほとんど認められませんでした。
 e. 平成12年度の冷水病原菌の保菌魚は、ハス(5/22尾)、オイカワ(2/23尾)、コウライモロコ(2/22尾)、モツゴ(1/4尾)で見られたが、13年度はハス(1/18尾)のみでその他の魚での保菌魚は見つかりませんでした。14年度は守口市庭窪地区では10月に採集したコウライモロコ1尾、2月のオイカワ2尾、ギンブナ1尾にPCR検査による陽性魚が出現しまた。しかし、フナ属以外のコイ科魚類では保菌魚は認められるものの、発病死亡魚は見られていません。

図 庭窪地区の平均水温と死亡魚数

図 庭窪地区の平均水温と死亡魚数

 

 河川の濃縮水のPCR検査では、平成12年度の試料から2回陽性が認められましたが、13年度以降の河川水には陽性試料は認められませんでした。
f.  平成13年度以降の冷水病は、流行の下降期となり、14年度は流行の休止期であると考えらます。
(2)腹口類
 a. 平成12年度は(7~10月)には検査魚に腹口類は認められませんでしたが、平成13年度は周年寄生が認められました。
 b. 平成12年度、13年度、14年度いずれも、冬季に寄生数(1尾あたり)が多くなりました。
 c. 被寄生魚には、出血などの症状はほとんど見られず軽症化しているようです。
(3)ウオビル
a. 平成11年度には衰弱したフナ1尾にのみ寄生が認められたが、平成12年度からは多くの衰弱したフナに寄生が認められました。
b. 衰弱魚から採集したウオビルは、他の健康なフナには定着せず再寄生は見られませんでした。
c. しかし、14年度は寄生数も少なく冷水病同様流行の休止期と考えられます。

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