環境分野 快適な環境や生物多様性の保安全を支える調査研究

魚類の生息・繁殖に対する親水水路整備の効果

魚類の生息・繁殖に対する親水水路整備の効果

生物多様性センター

1 目 的

 水底や壁面をコンクリートで固めた三面水路は、生物の産卵場所がない、身を隠す水草が生えない、大雨ですべてが洗い流されるなど様々な問題点が指摘されています。こうした水路の増加は、各地で種の絶滅や生息種と個体数の減少、多様性の低下の原因となっています。本調査は、大阪府茨木市学園町において、都市基盤整備公団が造成した集合住宅周辺の住環境改善の一環として行った、水路の改修が魚類の生息や繁殖に効果があるか否かを明らかにするため実施しました。その結果、出現種や生息数が著しく増加し、生物多様性の向上に効果が認められたので報告します。

2 方 法

 三面水路に深場(基底面-30cm)や魚巣(隠れ穴)、階段(下に隠れ場)などを設置し(第1図と写真)、未改修区と生物保育能を比較しました。事前調査は1999年度に5定点(うち、改修予定4点)で、事後調査は2000年6月~2002年5月に事前調査点を含む17定点で延べ18回、水環境(水深・流速・水質)と魚類の生息・繁殖状況を調査しました。また、水路の構造別に魚類生息密度(個体数/㎡)を求め、その利用度を比較しました。

第1図.水路の位置と構造

3 成果の概要

(1)水環境
 水温は6.6~32.6℃、溶存酸素濃度とpHは整備の前後で生物の生存に支障のない水質でした。水深は整備前が5~15cm、改修後は浅場が6~44cm、深場が21~69cmと整備前よりやや深くなっていました。

(2)整備前後の魚類生息種と数の変化
 整備前にはギンブナ、オイカワ、モツゴ、メダカ、カワヨシノボリ、熱帯魚のグッピーがみられました。ギンブナとオイカワは成魚がみられず、カワヨシノボリも産卵基質(浮き石)がないことから、水路での繁殖は困難と判断されました。改修後の2000年度にはギンブナ、オイカワ、モツゴ、メダカが多量に出現し、カマツカ、タウナギ、ドジョウ、タイリクバラタナゴ、熱帯魚シクリッドの5種も出現しました.2001年度には,さらにナマズ、タモロコ、キンギョが加わりました。整備前、モツゴは少数でしたが改修後は1000尾近くに、オイカワは稚魚から成魚まで数千尾が観察されました。生息種数は整備前が6種、改修後の2000年度は10種、2001年度には13種に増加しました(第1表)。2000年度に未改修区(三面水路)で観察された魚種・個体数は8種278尾、改修区は10種3346尾、2001年度は未改修区5種545尾、改修区12種6383尾と、改修区での種数と生息数の増加が著しいものでした。

(3)水路の構造と魚類の利用
 止水性魚の代表としてギンブナ、コイ、モツゴ、流水性魚としてオイカワの生息密度を、魚巣のある浅場と深場および階段深場で比較しました。両者とも階段深場に多く、次いで魚巣深場、浅場の順でした。魚巣の効果を検証するため、深場5か所の内2か所を閉鎖した結果、両者とも魚巣が開口する深場に多く集まり、隠れ場の効果が明らかになりました。 タイリクバラタナゴは産卵母貝となるドブガイ・イシガイと同時に放流しましたが、両貝種とも放流後に見られなくなりました。水路に二枚貝の生息可能な砂泥溜りができれば、繁殖の可能性があると考えられます。
 メダカは階段深場や魚巣深場に多く集まりました。これは水鳥に攻撃された時、植物の隙間や水中深くに潜ると捕食されないためと考えられます。底砂中の餌を食べるカマツカは、2001年度に砂を投入した後に増加し,ドジョウ、タウナギは深場の砂泥や落葉の中で、ナマズは魚巣内にみられました。
 外来魚のグッピーやシクリッドは飼育魚が人為的あるいは偶発的に流入したものと推察されます。

大阪府茨木市学園町親水水路の出現魚数とその観察尾数

分類 魚種名/調査年度 1999年(H11) 2000年(H12) 2001年(H13)
和名/改修区域 全区未改修 未改修区 改修区 未改修区 改修区
止水性 フナ類 28 1456 10 674
コイ   2 263 1 59
キンギョ         1
モツゴ 51 1199   764
タモロコ     1   2
タイリクバラタナゴ(外来種)     1   2
流水性 オイカワ 162 128 530 4560
底生性 カマツカ   3 8 3 59
ドジョウ   1 2   7
カワヨシノボリ        
マナマズ         1
タウナギ   1 1 1  
表層性 メダカ 30 287   225
熱帯魚 グッピー(外来種)        
シクリッドの一種(外来種)     1    
合計   278 3346 545 6383
出現種数 6種 8種 10種 5種 12種
15種 6種 10種 13種

◎:多数出現 ○:少数出現

4 普及に向けて

 この水路整備で最も有効な構造としては、深みと隠れ場があげられます。周辺から僅か10cm程度の水深でも魚類は深みへと集まりました。また階段下の空間は奥行きが広く、植栽や水草が隠れ場となり、多くの魚種が利用しました。しかし,魚巣によっては,水深の不足から活用されない場合もあり,隠れ場とするには、入口の1/2~2/3(20~30cm)が水没するよう調整する必要があります。
 2000年度冬季は農閑期の低水位により水温も低下し、魚類は下流へと避寒移動しました。しかし、2001年度は地元農業水利組合の協力により、秋から水位を高く調整した結果、2002年2月には深場魚巣内に多数のオイカワやフナ、コイ、タモロコ、メダカ、タイリクバラタナゴなどの越冬がみられました。また、周辺農家の協力により水田での殺虫剤の使用が抑制されたため、水田内にメダカ、カイエビ、ホウネンエビ、カブトエビ、シャジクモなどが発生し、水路へも放流されました。さらに、浅くて魚類が利用しなかった東側上流を水深40cm程度に調整した結果、植栽にしか利用できなかった魚巣に水が入り、本来の機能が発揮され、2002年5月には多数の魚類が観察されました。この様に水路で魚類を維持するには水路の構造改良も重要ですが、地元の協力による日常的管理が大きく貢献します。また一方で、水路にはゴミの投棄が後を絶たず、オオクチバスを放流したとの証言が得られたり、水路掃除ではゴミや泥とともに砂までが除去され、水草やシジミ類、カマツカなどの生息場所がなくなるという事も起きました。

 このように、水路の生物を保護するためには地元自治会や農業水利組合、小学校、自治体などが協力し不可欠です。身近な生物を維持することは、地域の生活環境の向上に寄与し、人と生物が共存する生活空間を創造することに繋がります。 

親水水路の概観と生息魚類

 

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