大阪府立環境農林水産総合研究所

環境農林水産 質問BOX(過去に寄せられたよくある質問)

水産/その他のご質問

大阪湾の水質は良くなってきているの?

公開日 2018年06月07日

大阪湾の周囲には工業地帯や人口密集地が広がり、そこから排出される様々な物質が河川を通じて大阪湾に流れ込みます。そのなかには植物プランクトンの生育に欠かせない窒素やリンなどの物質も多く含まれます。水に溶け込んでいる窒素やリン(溶存態無機窒素、同リン)などが増えすぎると、植物プランクトンの異常増殖による赤潮が発生したり、増殖したプランクトンが死んで微生物に分解される際に海底近くの水中の酸素が使われて酸素の少ない水(貧酸素水)が発生したりします。一般に水域がそのような状態になることを富栄養化と呼んでいます。

水産技術センターでは水産試験場時代を含め大阪湾の水質調査を昭和30年代から行ってきていますが、現在行っている調査のかたちができたのは昭和47年です。その結果によると、富栄養化の著しかった昭和40年代~50年代中頃に比べると、それ以降はゆるやかながら溶存態無機窒素、リンともに濃度が下がってきています。これは、昭和53年の「水質汚濁防止法」「瀬戸内海環境保全特別措置法」の改正により導入された水質総量規制制度によるものが大きく、平成13年からは従来のCODに加えて、窒素とリンが総量規制の対象となりました。また、貧酸素水についても発生する海域が狭くなったり、酸素濃度の下がり方が弱くなったりしてきています。しかしながら、現在でもなお年間10~20件(昭和50年頃は30件前後)の赤潮が発生し、湾奥海域では初夏から初秋の間に貧酸素水が発生し続ける状態にあります。貧酸素水が発生した海域では、海底近くに住む生き物たちは弱ったり、ひどい場合にはほとんどの生き物が死んだりしてしまいます。一方で、湾南部の海域では、窒素やリンの不足により、ワカメやノリの生育不良・色落ちが問題になっています。

このように、大阪湾は海域によって水質の状況が大きく異なっており、環境の保全・再生・創出に向けた課題も海域によって大きく異なっています。現在では、平成27年に改正・変更された「瀬戸内海環境保全特別措置法」「瀬戸内海環境保全基本計画」に基づいて「瀬戸内海の環境の保全に関する大阪府計画」が定められており、「豊かな大阪湾」を目指して、湾内でも状況に応じて重点的に実施する施策を変えるなど、海域ごとにきめ細かく取組を推進することとしています。

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