大阪府立環境農林水産総合研究所

 
環境農林水産 質問BOX(過去に寄せられたよくある質問)

環境/生物多様性(淡水生物)に関するご質問

イタセンパラについて教えてほしい。

公開日 2014年03月10日

イタセンパラはコイ科タナゴ亜科に属する淡水魚で、琵琶湖・淀川水系(ただし、琵琶湖そのものを除く)・濃尾平野・富山平野に分布しています。
昭和49年に天然記念物(文化庁・文化財保護法)に、平成7年に国内希少野生動植物種(環境省・種の保存法)に指定されました。
大阪府内では淀川のワンドに生息しており、その可憐な姿などから“淀川のシンボルフィッシュ”とされています。しかし、近年激減して絶滅の危機に瀕しており、環境省レッドリスト絶滅危惧1A類、大阪府レッドリスト絶滅危惧1類に指定されています。
 
イタセンパラの属するタナゴの仲間は、生きた二枚貝に産卵するという特殊な生態をもっています。産卵の際には必ず出水管から貝の体内に卵を産みこみます。そのため、産卵期(イタセンパラでは秋)には、メスは卵を産みこむための産卵管を伸ばします。一方、婚姻色に染まったオスは貝の周囲になわばりをはって、他のオスを追い払いながらメスの産卵を誘います。メスが産卵すると、オスはすかさず貝の入水管付近で放精し、卵は貝の体内で受精します。
 
イタセンパラは受精後約1週間でふ化し、仔魚は貝の中で約7ケ月をすごして、翌年4~5月に貝の出水管から泳ぎ出ます。ふ化直後の仔魚は眼や口、ヒレのないウジ虫のような形をしており、貝から出るまでゆっくりと成長します。貝の中での発育には、低温への大きな温度変化を必要とします。このような生態は、日本の冬の気候に進化適応したものと考えられます。また、貝から出た後の成長は早く、その年の秋には産卵します。
 
イタセンパラの生息する淀川のワンドは、タナゴの仲間をはじめ多くの淡水魚が生息する水域ですが、近年は外来種の増加など環境が大きく変化して、在来種が減少しています。イタセンパラやイチモンジタナゴ、アユモドキ、ツチフキ、スジシマドジョウなどは近年まったく姿を見ることができない状況になっています。
 
そこで、大阪府環境農林水産総合研究所 生物多様性センターでは、保全池を設置するなどしてイタセンパラの保護に取り組んでいます。
 
産卵期のイタセンパラ 左;メス右;オス
産卵期のイタセンパラ 左;メス右;オス
 
 
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